経営における「人間の記憶」の限界と、システム化すべき5つの業務領域

人は脳で事象を記憶し、判断し、行動しています。それが一番早く、お手軽であるため、中小企業の現場ではどうしても「システム」が軽視されがちです。

しかし、人の記憶には限界があります。
私が業務システムの開発に取り組んだ最大の理由は、「記憶の部分をシステムに任せることで、活用できる情報量を爆増させること」にありました。膨大な記憶を取り出しやすく、見やすく、理解しやすい形で保存することこそ、システムが最強のツールとなる理由です。

今回は、私が開発した「NSRA-KEIRI」システムにおいて、特に重要視して実装した5つの管理機能と、その設計思想について解説します。

目次

  1. 生産管理システム:現場の「時間」と「異常」を見える化する
  2. 資材(仕入)管理システム:利益の源泉をコントロールする
  3. 販売管理システム:記録から「未来の構想」へ
  4. 勤怠管理・給与管理:公正な評価と会社存続のために
  5. 報告書管理:埋もれがちな「知恵」を資産にする

1. 生産管理システム:現場の「時間」と「異常」を見える化する

工場には多くの機械があり、それぞれ処理スピードや特性が異なります。これらをシステム化する際、私が最も意識したのは「最初からすべてを取り入れない」という点です。

段階的な導入とカスタマイズ性

すべての要素を一度に取り入れようとすると、開発は遅れ、現場も混乱します。主要となる要 素でまずはシステムを構築して運用し、必要であれば新しい要素を組み入れる。この「小さく始めて育てる」アプローチが成功の鍵です。

データから予兆を掴む

システムによって処理量が可視化されると、単なる記録以上のものが見えてきます。

  • 時間の計算: 正確な生産終了時間がわかり、精度の高い生産計画が立てられます。
  • 異常の検知: 直近のデータを並べてグラフ化することで、「いつもと違う動き」を直感的に発見できます。
  • ドタバタ回避: 精度の高いデータ蓄積があれば、余裕を持った計画立案が可能になり、トラブル発生時も即座にリカバリー計画を策定できます。

2. 資材(仕入)管理システム:利益の源泉をコントロールする

製品を作るための「部品」や「材料」の管理は、単に在庫を数えるだけではありません。

リードタイムとフィードバック

発注してから納入されるまでの「リードタイム」を管理することで、生産計画に正確にフィードバックできます。「いつまでに材料を用意すべきか」が分かれば、余分な在庫を持たずに済みます。

価格変動の監視

特に重視しているのが、仕入金額の推移分析です。価格変動が激しい資材の単価を監視することは、最終的な会社の利益を予測する上で非常に重要です。
また、「最近使用が少なくなった資材」の傾向を早期に掴むことで、廃棄処分となる長期在庫のリスクを防ぐ機能も重要です。

3. 販売管理システム:記録から「未来の構想」へ

顧客からの受注、出荷、売上。これらは「過去の記録」ですが、システム化の真の目的は「未来の予測」にあります。

多角的な分析

販売実績をシステムに蓄積することで、以下のような傾向が見えてきます。

  • 取引先ごとの好不調
  • 主力商品のライフサイクル
  • 業界全体の傾向や、季節性の変動

これらの指標を、必要な時にワンクリックで取り出せるようにしておくこと。これは営業活動だけでなく、経営判断のスピードを上げるために不可欠な要素です。

4. 勤怠管理・給与管理:公正な評価と会社存続のために

経営において人件費は最も大きなファクターの一つです。システム化においては、以下の2点を重視しました。

  1. 公正な評価: 正確な勤怠データは、仕事に従事する人たちの公正な査定につながります。
  2. 経営へのインパクト把握: 会社を運営するためにどれだけの人件費が必要か、損益にどう影響するかをリアルタイムに把握することは、会社の存続に関わります。

また、昨今は労働法への対応も厳格化しています。残業時間の自動集計など、健全な労働環境を守るためにもシステムによる管理は必須です。

5. 報告書管理:埋もれがちな「知恵」を資産にする

私が個人的に最も効果を感じているのが、この「報告書管理」機能です。
通常の業務システムでは見落とされがちですが、以下のような「定性的なデータ」こそ、会社の資産です。

  • 顧客との面談記録
  • 社内部署間での決定事項
  • 機械の障害対応記録
  • 製品の不適合(クレーム)記録

記憶より記録

「去年のあの件、どうなったっけ?」とメールを掘り返すのは時間の無駄です。
障害対応で復旧に精一杯な時こそ、後から記録を残すことで、次回同じトラブルが起きた時の復旧時間が劇的に短縮されます。

経営者がすべての現場に立ち会えなくても、システム上の報告書を見ることで状況を把握できる。これもシステム化の大きなメリットです。


まとめ

人は脳で記憶し判断しますが、その容量には限界があります。
「記憶」をシステムに依存(アウトソーシング)し、空いた脳のリソースを「創造」や「判断」に使う。

これこそが、私が考えるシステム管理のあるべき姿であり、このアプリの開発思想でもあります。