【脱エクセル】個人事業主が「Excel管理」に限界を感じて、Webシステム開発を決意した3つの理由

「経理や在庫管理なんて、Excel(エクセル)で十分じゃないか?」

当初、私もそう思っていました。表計算ソフトは万能で、手軽に始められます。
しかし、事業が進み、データが増えるにつれて、便利だったはずのExcelが「業務の足かせ」に変わる瞬間が訪れました。

今回は、私がなぜ慣れ親しんだExcelを卒業し、PythonとDjangoで独自のWebシステム(NSRA-KEIRI)を開発することになったのか。
現場で痛感した「Excel管理の3つの限界」についてお話しします。

1. 「最新版がどれかわからない」問題(同時編集の壁)

Excelファイルを共有フォルダに入れて管理していると、必ずこの問題が起きます。

  • 「在庫管理表_最新.xlsx」
  • 「在庫管理表_最新_修正版.xlsx」
  • 「在庫管理表_20260111_田中.xlsx」

誰かがファイルを開いている間は、他の人は書き込めない(読み取り専用になる)。
あるいは、別々にコピーして作業してしまい、後で合体させるのに数時間かかる…。

Webシステム(データベース)にしたことで、「いつ誰がアクセスしても、常にそこにあるのが最新データ」という状態が実現し、このストレスから完全に解放されました。

2. 「データが壊れる・消える」恐怖(堅牢性の壁)

Excelは、誰でも簡単に「行削除」や「上書き」ができてしまいます。
ある日、数式が入っていたセルを誤って消してしまい、請求書の合計金額が合わなくなったことがありました。

「いつから間違っていたのか?」「バックアップはどこだ?」と冷や汗をかく時間は、経営にとって最大の無駄です。

自作システムでは、「スナップショット機能」や「操作ログ」を実装することで、大事なデータが誤操作で消えない仕組みをコードレベルで組み込みました。

3. スマホで作業ができない(場所の壁)

Excelは基本的にPCの前に座って操作するものです。
しかし、在庫の確認は「倉庫」で、営業活動は「客先」で行います。

「あとで事務所に戻って入力しよう」は、入力漏れの元です。
PythonAnywhereを使ってシステムをクラウド化したことで、「倉庫でスマホを取り出し、その場で在庫数を更新する」ことが可能になりました。

スマホで業務システムを操作するイメージ
クラウド化により、場所を選ばない働き方が可能に

まとめ:攻めの経営のためのシステム化

Excelは素晴らしいツールですが、「記録」には向いていても、「チームでの共有」や「未来の分析」には限界があります。

私が開発したNSRA-KEIRIは、これらの課題を解決するために生まれました。
もし今、Excel管理に限界を感じているなら、それは事業が成長している証拠かもしれません。
次はシステム化というステップへ進んでみてはいかがでしょうか。

脳のメモリを解放するためのシステム活用論

私たちは普段、無意識のうちに多くのことを脳で記憶し、過去の経験に基づいて判断し、行動しています。
「あのお客様の単価は大体これくらい」「在庫はまだ棚にあったはず」
確かに、頭の中にある引き出しから記憶を取り出すのが一番早いですし、メモ帳やExcelさえあれば、小規模なうちは事足りるのも事実です。

しかし、事業が続けば続くほど、そして取引が増えれば増えるほど、「人の記憶」は曖昧になり、限界を迎えます。
その限界を超えて無理に覚えようとすると、本来経営者が使うべき「判断力」や「創造力」が、単なる「記憶維持」のために消費されてしまうのです。

システム開発の原点

私が業務システムの開発に取り組んだ最大の理由は、
「『覚える』作業はすべてシステムに任せて、人が扱える情報の質を高めること」にありました。

膨大な記録を、必要な時に、誰もが間違いない状態で取り出せるようにする。
それこそが、システムを導入する本来の意義だと考えています。

システムに委ねるべき「5つの記憶」

具体的に、どのような業務を脳から切り離し、システムという「外部記憶装置」に移すべきでしょうか。私は以下の5つの領域が重要だと考えて設計を行いました。

  • 1. 販売の記憶(いつ、誰に、いくらで売ったか)
    「あの時の見積もり金額」を感覚で決めず、過去の正確な履歴を一瞬で呼び出すことで、適正な価格交渉が可能になります。
  • 2. 在庫の記憶(いま、何が、いくつあるか)
    棚を見に行かなくても、手元の画面で数がわかる。過剰在庫や欠品による機会損失を防ぐには、記憶ではなくデータが必要です。
  • 3. 仕入の記憶(原価は適正か)
    原材料や仕入れ値の変動は、利益に直結します。過去の推移を記録しておくことで、コスト削減のヒントが見えてきます。
  • 4. 経費の記憶(無駄遣いはないか)
    領収書の山を後でまとめて整理するのではなく、発生した瞬間に記録する。これで確定申告の憂鬱から解放されます。
  • 5. 対応の記憶(トラブルや約束事)
    お客様との細かな約束や、過去のトラブル対応。これらを属人化させずチームで共有することが、組織の信頼に繋がります。

これらをシステムに任せることで、あなたの脳は「記録係」から解放されます。
空いた容量で、新しい商品のアイデアを考えたり、お客様へのサービスの質を高めたりすること。
それこそが、経営者がシステムを持つ本当のメリットなのです。

今回は、私が開発した「NSRA-KEIRI」システムにおいて、特に重要視して実装した5つの管理機能と、その設計思想について解説します。

目次

  1. 生産管理システム:現場の「時間」と「異常」を見える化する
  2. 資材(仕入)管理システム:利益の源泉をコントロールする
  3. 販売管理システム:記録から「未来の構想」へ
  4. 勤怠管理・給与管理:公正な評価と会社存続のために
  5. 報告書管理:埋もれがちな「知恵」を資産にする

1. 生産管理システム:現場の「時間」と「異常」を見える化する

工場には多くの機械があり、それぞれ処理スピードや特性が異なります。これらをシステム化する際、私が最も意識したのは「最初からすべてを取り入れない」という点です。

段階的な導入とカスタマイズ性

すべての要素を一度に取り入れようとすると、開発は遅れ、現場も混乱します。主要となる要 素でまずはシステムを構築して運用し、必要であれば新しい要素を組み入れる。この「小さく始めて育てる」アプローチが成功の鍵です。

データから予兆を掴む

システムによって処理量が可視化されると、単なる記録以上のものが見えてきます。

  • 時間の計算: 正確な生産終了時間がわかり、精度の高い生産計画が立てられます。
  • 異常の検知: 直近のデータを並べてグラフ化することで、「いつもと違う動き」を直感的に発見できます。
  • ドタバタ回避: 精度の高いデータ蓄積があれば、余裕を持った計画立案が可能になり、トラブル発生時も即座にリカバリー計画を策定できます。

2. 資材(仕入)管理システム:利益の源泉をコントロールする

製品を作るための「部品」や「材料」の管理は、単に在庫を数えるだけではありません。

リードタイムとフィードバック

発注してから納入されるまでの「リードタイム」を管理することで、生産計画に正確にフィードバックできます。「いつまでに材料を用意すべきか」が分かれば、余分な在庫を持たずに済みます。

価格変動の監視

特に重視しているのが、仕入金額の推移分析です。価格変動が激しい資材の単価を監視することは、最終的な会社の利益を予測する上で非常に重要です。
また、「最近使用が少なくなった資材」の傾向を早期に掴むことで、廃棄処分となる長期在庫のリスクを防ぐ機能も重要です。

3. 販売管理システム:記録から「未来の構想」へ

顧客からの受注、出荷、売上。これらは「過去の記録」ですが、システム化の真の目的は「未来の予測」にあります。

多角的な分析

販売実績をシステムに蓄積することで、以下のような傾向が見えてきます。

  • 取引先ごとの好不調
  • 主力商品のライフサイクル
  • 業界全体の傾向や、季節性の変動

これらの指標を、必要な時にワンクリックで取り出せるようにしておくこと。これは営業活動だけでなく、経営判断のスピードを上げるために不可欠な要素です。

4. 勤怠管理・給与管理:公正な評価と会社存続のために

経営において人件費は最も大きなファクターの一つです。システム化においては、以下の2点を重視しました。

  1. 公正な評価: 正確な勤怠データは、仕事に従事する人たちの公正な査定につながります。
  2. 経営へのインパクト把握: 会社を運営するためにどれだけの人件費が必要か、損益にどう影響するかをリアルタイムに把握することは、会社の存続に関わります。

また、昨今は労働法への対応も厳格化しています。残業時間の自動集計など、健全な労働環境を守るためにもシステムによる管理は必須です。

5. 報告書管理:埋もれがちな「知恵」を資産にする

私が個人的に最も効果を感じているのが、この「報告書管理」機能です。
通常の業務システムでは見落とされがちですが、以下のような「定性的なデータ」こそ、会社の資産です。

  • 顧客との面談記録
  • 社内部署間での決定事項
  • 機械の障害対応記録
  • 製品の不適合(クレーム)記録

記憶より記録

「去年のあの件、どうなったっけ?」とメールを掘り返すのは時間の無駄です。
障害対応で復旧に精一杯な時こそ、後から記録を残すことで、次回同じトラブルが起きた時の復旧時間が劇的に短縮されます。

経営者がすべての現場に立ち会えなくても、システム上の報告書を見ることで状況を把握できる。これもシステム化の大きなメリットです。


まとめ

人は脳で記憶し判断しますが、その容量には限界があります。
「記憶」をシステムに依存(アウトソーシング)し、空いた脳のリソースを「創造」や「判断」に使う。

これこそが、私が考えるシステム管理のあるべき姿であり、このアプリの開発思想でもあります。

【開発裏話】AI時代のシステム開発|私を支えた4つの「相棒」たちとの格闘記録

「業務システムを自作しました」と言うと、「すごい!プログラミングがペラペラなんですね」と言われることがあります。
しかし、実態は少し違います。

今回の開発は、エラーとの戦い、そして新しい技術との終わりのない格闘でした。
私が作り上げた「NSRA-KEIRI」システムは、私一人の力ではなく、4つの強力なツール(相棒)が連携して動いています。

今回は、非エンジニアの私がどうやってシステムを形にしたのか。その裏側にある「Python」「Django」「PythonAnywhere」そして「Gemini」の役割について、分かりやすく解説します。

この記事の目次

  1. 基礎となる言語:Python(パイソン)
  2. 骨組みを作る:Django(ジャンゴ)
  3. 世界へ公開する場所:PythonAnywhere
  4. 最強のガイド役:Gemini(AI)
  5. まとめ:AI時代の新しい開発スタイル

1. 基礎となる言語:Python(パイソン)

まず、すべての基礎になっているのがプログラミング言語「Python」です。
家づくりに例えるなら、「木材やコンクリートといった材料そのもの」です。

Pythonは、AI(人工知能)開発やデータ分析によく使われる言語ですが、実は「読みやすさ」が最大の特徴です。
「もし(if)、在庫が(stock)、0なら(== 0)」のように、英語を読むような感覚でロジックを書くことができます。

今回の開発でも、「在庫連動」や「PDF出力」といった複雑な計算処理は、すべてこのPythonが裏で働いています。


2. 骨組みを作る:Django(ジャンゴ)

Pythonが「材料」なら、Djangoは「建築キット(と道具箱)」です。
材料だけあっても、一から柱を削って家を建てるのはプロでも大変です。そこで登場するのがDjangoという「Webフレームワーク」です。

Djangoには、Webアプリに必要な機能があらかじめセットになっています。

  • ログイン機能(セキュリティ)
  • データベースとの連携
  • 管理画面(データを裏から見る画面)

「ログイン画面を作りたい」と思ったら、一からコードを書くのではなく、Djangoが持っている「ログイン機能のパーツ」を呼び出すだけ。
私が今回、短期間で高機能なシステムを作れたのは、このDjangoという強力なキットを採用したからです。

3. 世界へ公開する場所:PythonAnywhere

PCの中でシステムが完成しても、それだけでは誰も使うことができません。
インターネットを通じて、スマホや他のPCからアクセスできるようにする必要があります。
そのための「土地(サーバー)」として選んだのが「PythonAnywhere」です。

通常、サーバー構築は非常に難解で、黒い画面にコマンドを打ち込み続ける「エンジニアの聖域」です。
しかし、PythonAnywhereはその名の通り「Pythonを動かすこと」に特化したサーバーです。

難しい設定の多くを省略でき、作ったDjangoアプリをそのまま「ポンッ」と置くだけでWebサイトとして公開できる。
この手軽さがなければ、私のシステムはまだ私のPCの中に眠ったままだったでしょう。

4. 最強のガイド役:Gemini(AI)

そして、今回の開発で最も重要な役割を果たしたのが、AIパートナーである「Gemini」です。
家づくりに例えるなら、「隣に座って常にアドバイスをくれるベテラン建築士」です。

開発中、私は何度もエラーという壁にぶつかりました。

  • 「画面が真っ白になった」
  • 「データベースの更新が反映されない」
  • 「AdSenseに有用性が低いと言われた」

そんな時、私はGeminiに相談します。
するとGeminiは、「それはPythonの書き間違いです」「Djangoの設定をこう変えてみましょう」「サーバーのログを確認してください」と、的確な答えを返してくれます。

私が「やりたいこと(要件)」を伝え、Geminiが「書くべきコード(実装)」を提示する。
この二人三脚があったからこそ、未経験の壁を乗り越えてシステムを完成させることができました。


まとめ:AI時代の新しい開発スタイル

今回、私が格闘したのは、これら4つのツールを「どう組み合わせるか」という点でした。

プログラミングをすべて暗記する必要はありません。
「何を作りたいか」という情熱(人間)と、「どう作るか」を知っているAI(Gemini)
そして、それを形にするPythonとDjango、公開するPythonAnywhere

これらが揃えば、個人でも本格的な業務システムを作り上げることができます。
もし、「自分には無理だ」と思っている方がいれば、ぜひこの「AIとの二人三脚開発」に挑戦してみてください。

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